視線の先:マープとジプシー『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------』

 この次にどこを見ているのだろう、と終演時に考えたことを覚えている。舞台はきれいで、どこから写真に撮っても絵になりそうだった。二度目にはぜひ席を変えて観たいと思った。

 マープとジプシー『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------』は池袋の東京芸術劇場シアターイーストで上演中、公演期間は 6月 8日(日)から 6月 22日(日)まで( 6月 16日(月)のみ休演)。また北海道伊達市のだて歴史の杜カルチャーセンター大ホールでも 6月28日(土)・29日(日)に公演される。

 フライヤーによれば本作は戯曲『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』の再構築だが、観ていたかぎりではひとり戯曲にとどまらず、近年上演された作品から少しずつ、要素が抜きだされているように感じられた。

 木製のフレーム同士をつなげ/ばらし、構造物をつくって/変形していったり(『モモノパノラマ』)、舞台の外にいる役者が、舞台の上の役者へ小道具などを渡したり、また舞台の外で実際に、調理などの作業をしてみせたり(『Rと無重力のうねりで』)、ビデオカメラで役者やミニチュアの街を映してみせたり(『あ、ストレンジャー』(再演)など)、もちろんリフレインも使われている。フレームの移動によってズームを表現したり、回転舞台によって役者同士の関係やその場面の主役を反転させたり、といった表現も用いられた。
 何より舞台の外から舞台を見つめる、(その時舞台に登場していない)役者たちの視線が、観客と舞台、ではない部分で結ばれる舞台との関係性を浮かびあがらせる(このことには確か自分で気づいたのではなく、どこかで読んだはずだという気がするのだけど、誰のコメントだったのか覚えていない)。

 立ち位置を入れ替えてくり返されるリフレインはひとつの場面に少しずつずれた輪郭を重ねていく。唯一「デスステップ」、一部のファンのあいだでいわゆる「マームステップ」は使われなかった。

 誰がなにを見ているのか、気になる舞台だった。役者同士が互いに誰を見ているか。観客は舞台を見ていて、けれどその向こう側に、控えている役者たちのこともまた見えている。舞台の外から舞台に注がれる視線は誰のものか。回転舞台を回す波佐谷聡や中島広隆、小道具を舞台に渡す荻原綾のことは舞台からは見えているだろうか。それは誰として見えていただろうか。あるいはまた天井の目は。


 『ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。』の成田亜佑美が間取りを語る場面では、どうしても島での公演を思いだす。そういえば五反田でこのまえ、彼を久しぶりに見かけたような気がする。声をかけられなかったけれど安心したのだった。